2018年7月30日月曜日

ワンダー 君は太陽 (Wonder)


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(監督:スティーブン・チョボスキー キャスト:ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソンなど)

原作小説の著者であるスティーブン・チョボスキー自ら初監督を務めた「ウォールフラワー」から5年。(心に染みる青春映画…) 今回は世界的ベストセラー"Wonder" の映画化という企画。私はこの原作小説は読んでいないのですが、爽やかなライトブルーに題名のハンドレタリングが書かれた余白の多い子どもの顔、というデザインがとても印象的です。いつ見ても平積みになっていることが多く、人気なんだなあと思っていました。

主人公のオギーは遺伝的な疾患(トリーチャーコリンズ症候群)により産まれてすぐに27回手術を繰り返してきました。彼の顔にはその特徴が見られます。学校へ行かず、ずっと家庭学習を続けていたのですがそんな彼が5年生(アメリカでは小学校最後の学年にあたります)からうまれてはじめての学校へ通うことになる…というあらすじです。

オギーのことはもちろんですが、この映画では大好きなオギーを見守る彼の両親や姉、姉の親友、オギーを迎え入れるクラスメイトたち、そのひとりひとりの心の内をとても丁寧に描きます。視点の変わる瞬間は必然的なのにうっとりするほど軽やかでとてもスマート! そのあまりの手さばきに思わずホゲエエとなるのですが、それが劇中ずっと続くよー!もうほんとう見入ってしまいます。

オギーのカラっとした振る舞いや、皮肉をたっぷりと含んだ発言、(ずっと勉強を教えてくれたお母さんに「もっと良い先生に教わりたいしね」と学校へ行く意欲を表現して笑いを誘ったりする!)とっても聡明な様子に私たち観客はすぐに彼の輝きに気づきます。彼の特徴的な見た目は確かに彼や彼の家族に影響を与えてはいるのですがそれは彼という人間のひとつの要素です。それ以上に彼には憧れがあり、両親から教わった勇気や想像力、そして強さがありました。この映画で語られる物語はオギーの輝きに照らされた世界でのできごとなのでした。

オギー役のジェイコブ・トレンブレイの「ルーム」に引き続く天才っぷりはいわずもがな、彼の両親役のジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンの素晴らしい夫婦像が結婚ってエエナ〜!と心から思わせてくれるほど。特にオーウェン・ウィルソンが、世界で一番素晴らしいオーウェン・ウィルソンになっているのでこのキャスティングだけでも私の拍手が鳴り止みません。オギーのお友達となるジャックのキュートさ、オギーの姉の親友のミランダの呆れるほどの美しさもなんだかもうすごい…

好きなシーンについて挙げて行くとキリがないのですが、私がこの映画を観ていてすごくいいなと思ったのはこの映画がもつ「学校」という場所の存在感です。私はアメリカンスクールに通っていたので、なんとなくあの「新学期初日」の空気が、懐かしかったです。それはとても重苦しく、周りのみんなはスラスラと発言したり自信たっぷりに振舞っているのに自分は不安いっぱいでうまく息ができない感じです。

それでも学校は機会があれば、新しい事に挑戦し、知らなかったことを知り、友達と出会い、人間関係で嫌な思いをし、自分がどんな人間でありたいかを学ぶことのできる場所です。授業で学んでいることがその時オギーのまわりで起きていることにリンクしていたり、オギーの姉のヴィアが演劇クラブに入り、今までやったことのない事で自分を表現することを知っていく様子もすごく素敵でした。オギーもヴィアも、きちんと「学校」という場所を通して叶えたいことを叶えていく、というとても当たり前で難しいことをしている姿がとってもよかったです。

また、美術がとってもカワイイ!オギーとヴィアの部屋とかかわいすぎる。オギーの手術の度におそらくつけていただろうリストバンドが可愛く飾られたりもしていて、とても手が込んでいる。お父さんの使っている#1DADのマグカップ、サイコーだよ〜!!

2018年7月25日水曜日

「THIS YEAR’S GIRL 彼女に夢中!!」9月号



お知らせです。

京阪神エルマガジン社「SAVVY」9月号(7/23/2018発売)カルチャページの映画コーナーの「THIS YEAR’S GIRL 彼女に夢中!!」のイラストカットを描かせていただきました。第二回は「追想」主演のシアーシャ・ローナンです。

現状、ノリにノってる若手女優といえば彼女を思い出す人も多いのではないでしょうか。今作の舞台は1960年代イギリス、バイオリニストを夢みる超お嬢様のフローレンスを演じています。そんな彼女は歴史学者を目指すエドワードとひょんなことから出会い、恋に落ち、本当に美しく愛を育みます。あらすじとしては結婚することとなった二人に、結婚初夜にとある事件があり…(アラヤダ)…という感じです。

映画の作りがとても面白くて見入ってしまいました。追想という邦題は素晴らしいと思います。結婚式を終えて、ギクシャクしてしまう二人の様子をププ…クスクスと最初は観ちゃうのですが、事態を理解しはじめたころには…そして映画の余韻がもうすっっさまじいです。

神経質そうな表情を浮かべるシアーシャはとても素晴らしかったです。

2018年7月7日土曜日

「THIS YEAR’S GIRL 彼女に夢中!!」



お知らせです。

京阪神エルマガジン社「SAVVY」8月号より(6/23/2018発売)カルチャページの映画コーナーの「THIS YEAR’S GIRL 彼女に夢中!!」のイラストカットを 担当させていただくことになりました。とても嬉しいです。 新作映画の女優さんにスポットライトを当てた内容となります。

第一回は「バトルオブザセクシーズ」主演のエマ・ストーンです。
ノーメイクなのかしら?その上に肉体改造も行い、前作のララランドからは別人のような彼女。けれども彼女の持つ今日性のオーラは隠しきれませんね。今作では実在の女子プロテニスプレイヤーのビリー・ジーン・キングを演じます。
そんな彼女が戦いを挑むのが、元全米ジャンピオンのボビー。こちらはスティーブ・カレルが演じているのですが、彼も見る度に同じ人とは思えないですね。やたら声が大きく、地位も名誉もチヤホヤも本当にすべてがまだまだ欲しい彼が失礼極まりない言動を繰り返し大騒ぎする姿はイライラしながらもなんだか…あれっ…憎めない?それはビリー・ジーンもしっかりと把握しており、ボビーについては彼はただのピエロ、本当の敵は…と発言していたシーンが印象的でした。

彼女のラブロマンスも見逃せません、お相手のあの子は相当な小悪魔だったぞー ドキドキしちゃった!

2018年7月6日金曜日

ブリグズビー・ベア(Brigsby Bear)

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( 監督: デイヴ・マッカリー キャスト:カイル・ムーニー、マーク・ハミルなど )

主人公のジェームズは、両親と3人暮らし。外の世界と遮断された小さなシェルターで暮らし、週に一度届く教育ビデオの「ブリグズビーベア」が彼のすべて。夢中になって何度もビデオを見返し、ファンが集まるフォーラムにもせっせと投稿を欠かさない。ブリグズビーで頭いっぱいのジェームズを両親は少し心配しつつも、繰り返される規則正しい平穏な日々。
そんなある日、ジェームズの両親はジェームズを25年前に誘拐し、監禁していたとして逮捕されてしまう。本当の家族とともに新しい生活を始めるジェームズ。今まで知らなかったことを知り、初めてのことをたくさん体験する。お友達とも出会う。そうして、彼がずっと思いを馳せていた、ずっとずっと「やりたい」と思っていたことに向けて動き出します!

あらすじとしてはこのような感じなのですが、この映画は本当にあらすじでは追いつけない軽やかな足取りでびゅんびゅん走り回ります。友情、好きという気持ち、それを他人と共有すること、そして自分でものを作ること、人生においての素晴らしいことがたくさん起きます。それらは、ジェームズ自身がずっと持っていたもので、そして改めて世界に求めたから形になったことだと思います。

ジェームズはあっけらかんと初対面の人にも「僕の両親は僕を誘拐したけど、それでも彼らはクールだと思うなあ」と話します。刑事さんが神妙な面持ちで「彼らは君を触ったの…?」と質問した時にも、ジェームズはうなずきながらも、それに続くのは拍子抜けしてしまうような答えです。事件の概要だけを知った時に私たちが抱くイメージをひょいと飛び越え、とても自由に生きるジェームズの姿にわたしはまた新しいことを教わりました。
ジェームズの本当の両親の気持ちを考えると、起きてしまったことは決して許されることではありません。(だからこそ彼の本当の両親がする勇気ある決断には頭がさがる思いです)ジェームズを誘拐した二人はとても罪深く、守ろうとした生活は歪んだものです。それでも、ジェームズが心底ブリグズビーベアを愛し、夢中になり、それを他人と分かち合いたいと願い、自分でも作ることに踏み出すことを清々しいほどにやってのけるジェームズを見ていると、観ているわたしたちとしてはなにも裁く必要はないんだと感じます。

お父さんにはじめて連れていってもらったキッラキラの映画館、はじめてのパーティーでのドンチャン騒ぎ、はじめての友達との宝物みたいな会話、本当にだいすきなシーンでギューギューに詰まった映画です。ジェームズのとるまっすぐな行動や言葉すべてから彼の魅力が伝わります。初めてできる友達、スペンスの、教科書に載っていてほしいくらいの友達っぷりにも心打たれますがわたしは刑事さんが初めてジェームズに「僕は君の友達だよ」とした自己紹介と、彼に友情の証として差し出したコーラが忘れられません。それにしてもジェームズは、どこにいってもすぐにお友達ができて、すてきでしたね。周りの人々はうっとりするほどみんな優しいのですが、ジェームズが引き出してるようなところもあるんだろうなと感じました。

ジェームズが鼻息荒くブリグズビーベアについての感想を書き残していたように、わたしも必死に大好きな映画の絵を描いています。